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この本は前ページのものと同一のシリーズ(『ウクレレ・マスターズ』)のものだが、ライル・リッツのソロ・ウクレレにかなり「接近」できるすぐれものである。 ただし、あいかわらずライル・リッツの教則本はレベルが高い。 ちょっとだけ例を挙げるなら、たとえば下の訳文(抜粋)に「スプレッド・コード」という表現があるが、こんなやつです。「D♭6,9」というコードです。人差し指と小指で押さえるようです。 ![]() 同じ人差し指と小指で、こんなの(「D♭△9」)もあったり・・・ ![]() |
そうかと思うと、私たちには馴染みのある「A7」がこんなふうになっちゃう。上記の2本の指に加えて、中指も使います。![]() 「G13」になると、こんな感じ。これを瞬時に押さえられるようにならないと、譜面どおりには弾けないということ。しかしながら、ライルおじさんは、決してこの教則本の譜面どおりに弾くことを勧めてはいない。少し古風なスラングを用いて「頭を使って自分でアレンジを考えろ」と言っているのだ。なかなか厳しい。 ![]() さて、このハイレベルな本がどのような趣旨で編集されたものか、以下の抜粋を参考にしてください。 |
| はじめに(by ジム・ベロフ) この教則本は長年にわたる多くの読者からの「コード・ソロの本を出してほしい」というリクエストに応えるようにして出版された。 「コード・ソロ」では、メロディーとハーモニーがコードの枠組みの中に同居する。つまり、メロディーのひとつひとつの音にひとつのコード・フレームが対応しているという非常に高度なアレンジである。スキーのコースの難易度でたとえれば確実に「ブラック・ダイアモンド」だ。うまくいけば、ウクレレでもまるでジャズ・ギターのような効果が得られ、そのアレンジは美しさとロジックを兼ね備えるので、コード・チェンジが急速で激しくても、その動きは優雅でさえある。 「コード・ソロ」を演奏すること以上に困難なのは、もちろん「コード・ソロ」を実際に創ることである。光栄なことに、この本によって『ルルズ・バック・イン・タウン』や『ドント・ゲット・アラウンド・マッチ・エニーモア』などのクラシックな曲の目の眩むようなアレンジを研究する機会が与えられた。 どのようにしてコード・ソロを編んでいくかをライル自らが紹介してくれる。付属のCDではライル本人の演奏を確かめることもできる。ちなみにライルは優れた絵描きでもあり、その絵を数点掲載することもできて、これもまた光栄である。 今まで出版されたウクレレ教則本の中で、これほどインスパイアされるものはないだろう。あなたは、これらのアレンジを学び、そして再生産するという生涯の喜びを手に入れたのだ。 序文(by ライル・リッツ 以下同) スウィング、ジャズ、バラッド、ワルツ、ボサノバ、レゲエに及ぶ全15曲を収録したぞよ。どれもワシのお気に入りの曲じゃ。多くは普段の演奏プログラムの中のものじゃ。付属CDではベース入りで録音しておる。7曲はコオラウのテナー(DGBE)、8曲はFLUKE(GCEA)で演奏したんじゃが、それぞれハイD、ハイGなのじゃ。このチューニング方法は重要でのう…、メロディーを外側の2本の弦が交互に受け持つからじゃよ。(DGBEでもGCEAでもサウンドには問題ないのじゃがCDとはキーが異なる場合があるので注意されよ。) 見慣れたコードに聞き慣れぬコード名が付いているかもしれんのう。通常は「ディミニッシュ・セブンス」であるものが「セブンス(フラット・ナイン)」であったり「ナインス」が「マイナー・シックスス」や「マイナー・セブンス(フラット・ファイブ)」であったり・・・。それはじゃな、前後のハーモニーとの関係によるものだわい。 曲中でメロディーがリピートされるときには少々異なったアレンジを施しておるが、バラエティーのためじゃ。おぬしの好みで同じコードを用いても構わんぞよ。 この本の中で、おぬしが新しい音楽に出会い、そして新しい演奏スタイルを発見されることを願うばかりじゃ。 この本を最大限に活用する方法について リッチでメロウなボイシングこそポピュラー・ミュージックの要であり、ウクレレで弾くとグッドじゃな。残念ながらタイトな動きのある箇所ではシンプルなボイシングを用いているがの。 「スプレッド・コード」というやつは、コード内の音の積み重ね方を意味するのじゃ。人差し指と小指が6フレット(もしくはそれ以上)に広がるものじゃが、ユニークなボイシングが得られるので極めて効果的であるわい。 コードの中には3本または4本の指で押さえねばならんものもあるぞよ。特別な努力が必要なんじゃが、サウンドはそれだけの値打ちがあるわい。 ソロをするには、ウクレレのすべてのポジションの音に精通しておらねばならん。この本のアレンジでは、ほとんどすべてのポジションの音が利用されておる。フィンガーボードを駆け上がるテクニックを身に付けなされ。 曲紹介 『Lulu's Back In Town』 このワシにテーマ曲があるとすれば、この曲がそうじゃな。素晴らしい気分になれるし、フィンガーボードの上で安らぎが得られるのじゃ。テナーでは何度もレコーディングしたんじゃが、今回は面白半分にFLUKEを使用したぞよ。デモCDのグルーブ感こそ、この曲にふさわしいものじゃ。いつも弾いているイントロとエンディングも載せたからのう。 (その他 略) アレンジの仕方について 曲のアレンジはとてもやりがいのある作業じゃ。新しいメロディーを作る作業に匹敵するといってよいじゃろう。 曲選びが終わったら… 1)ウクレレのフィンガーボードに適当かどうか、その音域を測るのじゃ。同時にキーを決めるんじゃな。 2)演奏したいリズムのスタイルとテンポを見つけるのじゃ。 3)さて、本当に楽しいのはこれからじゃ! 頭の使いどころじゃよ。 コードの実験をするのじゃ。心地よいハーモニーの流れを試しなされ。適当な箇所にフレッシュなコードを挿入するとか。原曲のコードを拡大するとか。 モチーフ サブテーマの繰り返しのことじゃが、たとえば『素顔のままで』に注目しなされ。ビリー・ジョエルはイントロとターンアラウンドで賢明なモチーフを使っておるのう。この本でもそれを利用しておるぞ。モチーフは最初の小節から曲のムードを作り出すわけじゃ。 イントロ 『ルルズ・バック・イン・タウン』のイントロをチェックじゃ。ほかの弦ではコードが上昇するのに対して4弦のみ開放のままじゃろ。シンプルで効果的。これこそ「頭」を使った成果じゃの。『サテン・ドール』のイントロはデューク・エリントンのオリジナル・レコーディングにインスパイアされたものじゃ。曲のなかのメロディーの特徴がイントロを考える際のアイデアになるじゃろうて。『クワイエット・ナイツ』のように短い導入部がうまくいくこともあろうかの。イントロなしでサラリと始めるのもよかろう。 フィル 曲のなかには長く伸ばす音を使っているものがあるのう。サックス吹きとか歌手ならそのままでも構わんのじゃが、ウクレレにはどうもなあ…。『ドリーム』は美しい曲じゃが、4小節ごとの始めと終わりに長い音を使っておる。ジャカジャカ鳴らすだけではダメじゃな(タイクツじゃからのう)。曲が動くような味付けをするのじゃ。『ハウ・ハイ・ザ・ムーン』後半のジャジーなフィルを見なされ。最初の16小節でメロディーはその輪郭を明らかにしておるから、後半では原料にスパイスをかけておる。大事なのは、フィルの合間に拍子音痴にならんことじゃな。 コード これは本当に面白いぞよ。コードを付け加えたり代理コードを使ったり、あるいは他のコードに置換することでハーモニーを増幅することが可能じゃ。だからといって、あまりに遠くへ行ってしまってメロディーが曖昧になってはいかん。コンテクストと連続性に気をつけることじゃ。原曲に傷をつけんようにな。ナインスやサーティーンス、さらにはフラット・フィフスやオーギュメンテッド・フィフスで気持ちよくなりなされ。 エンディング 課題の最後はエンディングじゃ。この教則本ではひとつの例外を別にして全てが計算された終わり方になっておる。例外は『クワイエット・ナイツ』じゃが、これはフェイドアウトになっておる。この曲の一般的な終わり方じゃ。『サテン・ドール』のようにイントロをリプライズしてもよいじゃろう。『リッツ・クラッカー』はフツーに終わっておるが、ちょっとだけヒネっておる。引き伸ばすのも使える手じゃ。『ルルズ・バック・イン・タウン』では最後のフレーズを繰り返してからクラシックなカウント・ベイシー・スタイルで締めくくっておる。『セイント・トーマス』を見なされ。引き伸ばしをさらに引き伸ばしておるぞ。 さあて、材料を集めて、CDを聴いて、ウクレレを手にとって、頭を使って楽しむのじゃぞ! |